ブラジルどすこいコラム

【第11回】 歌って踊れば怖くない

 海外に長期滞在していると必ず「このままでいいんだろうか?」と悩む時期が来ると思います。日本では様々な出来事が起きているのに対し、地球の裏側にいる自分の環境は全く変わろうとしない。それどころかまるで時間だけがただ無駄に過ぎているかのようでもある。なにより自分の思い通りのプレーができないのが歯がゆく、イライラが募るばかり。

 チームメイトとは言葉や文化の壁があり、相手の考えていることがいまいち理解できない。そんなとき近くに日本語を話せて自分をちゃんと理解してくれる人間がいないとなれば「もう日本に帰りたい」なんて弱音がこぼれることも不思議ではありません。特に出発前に大きな希望を抱いてきたとなればその分「こんなはずじゃなかった」という気持ちは膨れ上がることでしょう。

 ブラジルでの武者修行中にホームシックにかかったとき、またはスランプに陥ったときあなたならどうしますか? その答えはもしかしたら周りのブラジル人が握っているかもしれません。ブラジル人はとにかく前向き。根っからの楽天的な性格の持ち主でたとえ問題を抱えても「まあしょうがないな」とか「なんとかなるさ」とあまり深刻に悩まない人が多いようです。

  それはきっと普段の生活の中にあまりにも問題が多すぎるということが背景にあるからだと思います。仕事に行かなければならないのにバスが来ない、大学がストライキに入っていつまで経っても卒業ができない、理由もなしに突然仕事場を首になった、こんなことが日常茶飯事なのでそんじょそこらの問題では動じないのでしょう。もちろんそれなりにストレスはあるはずです。ただブラジル人が上手いのはそれを見事に解消してしまうことなのです。

 人それぞれ違いますが、ブラジル人(主に男性)のストレス解消法を集約するとサッカー(観戦もくしはプレー)、ビール、そして音楽が大部分を占めているのではないでしょうか。特に音楽はサンバを筆頭にボサノバ、MPB、フォホなどたくさんの独自のジャンルを生み出しています。

  そのせいかブラジル人は歌って踊るのが大好き。ひと目を気にせずところ構わず踊り出してしまうほどです。歌い手がいて打楽器があればそこはたちまちパゴッチ(※)と化す。ギター一本でライブが始まる。ラジカセ一つでパーティーが成り立つ。それだけブラジル人の生活と音楽は密着しているといえます。彼らを見ていると人間は我を忘れてリズムに合わせて思い切り大声を出すこと、体を動かすことでストレスを解消させるどころか、生きるための活力を得ることができるのだなと感心させられます。
  がむしゃらに練習するだけでなく、たまには考えないこと、ハジケルことも明日を生きるためには重要ではないでしょうか?